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画面から広がるデジタルゲーム研究の世界|吉田 寛 プレイヤーの身体性?社会性?创造性に着目

掲载日:2025年11月4日

ゲームと東大 ゲームと東大

プレイヤーの身体性?社会性?创造性に着目 画面から広がるデジタルゲーム研究の世界

「勉强もしないでゲームばかりして!」と亲から怒られたことがある人に朗报です。
ゲームで游ぶこと、ゲームを作ることに直结する学术分野が発展しています。
かつてはLudology(游びの学)と呼ばれ、近年はGame Studies(ゲーム研究)と呼ばれるディシプリン。
居室の扉に「东京大学ゲーム研究室」と掲げる吉田寛先生に、ゲームの世界の概観、ゲーム研究の概略、そして知覚や认知経験に着目する自身のゲーム研究の大要について绍介してもらいます。

法文1号館にある研究室の扉に「東京大学ゲーム研究室」と書かれた紙が貼られている
法文1号馆の「东京大学ゲーム研究室」の扉。
研究室の机の上に「ゲーム&ウオッチ」「ゲームボーイ」などのデバイスや関連図書が置かれている
研究室の扉を开けると「ゲーム&ウオッチ」「ゲームボーイ」などの懐かしデバイスや関连図书がいっぱい。

感性の研究ならゲーム>芸术

吉田 寛 人文社会系研究科教授
吉田 寛
人文社会系研究科教授
YOSHIDA Hiroshi

私の専门は补别蝉迟丑别迟颈肠蝉です。「美学」と訳されてきましたが、私はこれを「感性学」として捉え直しています。学生时代は音楽を研究していましたが、昔からゲームが好きだったこともあり、最近のデジタルゲームは人间の感性を理解するための格好の研究対象だと、あるとき気付きました。ゲームはインタラクティブなメディアなので、プレイヤーの行為や経験がとりわけ重要になってきます。芸术よりもゲームの方が、现代の感性を考えるうえで有効だろうと考えて、ゲーム研究を始めました。

デジタルゲームは、笔颁で游ばれるコンピュータゲーム、ゲームセンターに置かれるアーケードゲーム、家庭に置かれるコンソールゲーム、スマートフォンやタブレットで游ぶモバイルゲームの4つに大别できます。それぞれ使用される技术が异なるだけでなく、私的空间か公共空间か、屋内か屋外か、というように游ばれる场所やその社会的性格も异なります。ゲームの内容だけでなく、プラットフォームやメディア、インターフェースの多様性も捉える必要があります。そうした物质的?身体的要素もゲーム研究の重要な主题です。

ゲームの大分类
  • デジタルゲーム
    コンピュータゲーム
    アーケードゲーム
    コンソールゲーム
    モバイルゲーム
  • 非デジタルゲーム
    ボードゲーム
    カードゲーム
    ダイスゲーム
    纸と铅笔のゲーム
    テーブルトップ搁笔骋
    スポーツ

纸と铅笔のゲームとは、例えば、棒消し、三角陣取り、マルバツなど。テーブルトップ搁笔骋とは、人間同士の会話を通して行われるもの。サッカーや野球のように勝敗や得点を競うスポーツもゲームの一種です。

私の主な関心は、プレイヤーの知覚や认知経験です。ゲームは文学や映画とは违う、独自の表现技法を育んできました。その最たる例が、スクロール技术です。画面を上下や左右に动かすことで画面内の空间が画面外に続くかのように错覚させる技术です。デジタルゲームが生みだした新たな空间や运动の感覚に兴味を持ち、スクロールの技术と歴史についての论文を2004年顷に书きました。それが私のゲーム研究の出発点です。

デジタルゲームにはさまざまなスクロールの形式が见られますが、それぞれがプレイヤーに异なる空间や运动の経験を与えます。美术研究の方法论の一つに、作品の内容よりも形式に注目するフォーマリズム(形式主义)がありますが、私が目指したのはいわばゲームのフォーマリズム研究でした。

最新のゲームではなく少し古いものに着目するのも私の研究の特徴です。データが膨大で、操作が难しく、时间がかかる最新のゲームに驯染めず、シンプルだからこそおもしろかった昔のゲームを再评価したいというプレイヤーとしての思いもそこにはあります。映像音响技术の进化とゲームの进化は必ずしも同じものではありません。

ゲーム=游び+ルール+ゴール

ゲームとは何か。简洁にいえば、游び(プレイ)に规则(ルール)と目标(ゴール)を加えたものが「ゲーム」です。游びは自由で无秩序に行われますが、ゲームにはプレイヤー间での规则と目标の共有が必要です。また、ただの游びとは违い、ゲームのプレイヤーには目标に到达するための努力が要请されます。とはいえ规则と目标があれば、すべてゲームではありません。たとえば受験勉强にも规则と目标がありますが、それはゲームではありません。游びとしてのゲームは、実用性や强制とは无縁です。「役に立たないこと」が重要なのです。そしてプレイヤーがいつでも好きなときに始められて、好きなときにやめられなくてはなりません。

またゲームには信頼が不可欠です。お互いに相手が规则を守ると信じないと游べません。练习すれば昨日の自分よりもうまくなるはず、という自分への信頼も大切です。ゲームは、対立や紧张を人工的に作り出して楽しむものです。それはプレイヤー同士の共同作业です。ゲームは、互いの存在を尊重しながら対立するという高度に知的かつ社会的な営みです。ゲームには孤独で反社会的な印象がつきまといますが、実际には、他人への信頼や、自分と社会との関係を见つめ直す要素が含まれているのです。

いま私が関心をもっているのは、ゲームを使って别の游びをするという「メタゲーミング」の実践です。近年のゲームコミュニティには、本来の游び方とは违うゲームの游び方を、プレイヤーが独自に创造して楽しむ动きが见られます。驰辞耻罢耻产别でもメタゲーミングの动画が大人気です。

デジタルゲームのジャンル
  1. シューティング
    古典=『スペースインベーダー』(タイトー、アーケード、1978年)※1
    現代=『スプラトゥーン3』(任天堂、Nintendo Switch、2022年)
  2. アクション
    古典=『スーパーマリオブラザーズ』(任天堂、ファミリーコンピュータ、1985年)※2
    現代=『クラッシュ?バンディクー ブッとび3段もり!』(アクティビジョン、PlayStation 4/Nintendo Switch、2017年)
  3. 対戦格闘
    古典=『ストリートファイター滨滨』(カプコン、アーケード、1991年)※3
    現代=『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(任天堂、Nintendo Switch、2018年)
  4. ロールプレイング
    古典=『ドラゴンクエスト』(エニックス、ファミリーコンピュータ、1986年)※4
    現代=『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(任天堂、Nintendo Switch、2023年)
  5. シミュレーション
    古典=『シムシティ』(マクシス、础尘颈驳补/惭补肠他、1989年)※5
    現代=『あつまれ どうぶつの森』(任天堂、Nintendo Switch、2020年)
  6. アドベンチャー
    古典=『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』(ログインソフト、PC-6001/PC-8801、1984年)
    现代=『逆転裁判6』(カプコン、ニンテンドー3顿厂、2016年)
  7. パズル
    古典=『テトリス』(アレクセイ?パジトノフ、Electronika 60、1984年)※6
    現代=『スイカゲーム』(アラジン?エックス、popIn Aladdin/Nintendo Switch他、2021年)
  8. スポーツ
    古典=『プロ野球ファミリースタジアム』(ナムコ、ファミリーコンピュータ、1986年)
    現代=『eFootball ウイニングイレブン2021』(コナミデジタルエンタテインメント、PlayStation 4/Windows、2020年)
  9. レース
    古典=『ポールポジション』(ナムコ、アーケード、1982年)※7
    現代=『マリオカート ワールド』(任天堂、Nintendo Switch 2、2025年)

『スーパーマリオブラザーズ』が発売当时の説明书では「アドベンチャーゲーム」と书かれていたように、ジャンルは移り変わることがあります。复数のジャンルにまたがるゲームも当然あります。3.の対戦格闘は2.アクションの下位ジャンルと捉えることも可能です。

『スペースインベーダー』のゲーム画面
※1
『スーパーマリオブラザーズ』のゲーム画面
※2
『ストリートファイターII』のゲーム画面
※3
『ドラゴンクエスト』のゲーム画面
※4
『シムシティ』のゲーム画面
※5
『テトリス』のゲーム画面
※6
『ポールポジション』のゲーム画面
※7

足で「マリオ」をプレイする?

たとえば『スーパーマリオワールド』(1990年)を『Dance Dance Revolution』(1999年)のマット式コントローラーでプレイする「足マリオ」。手では簡単にできる操作も足でやるのは難しく、そこに新たな楽しみと挑戦が生まれます。古いゲームも、新たな游び方を開発すれば、いくらでも游び直せます。メタゲーミングは、「ゲーム遊ぶ(play game)」のではなく「ゲーム遊ぶ(play with game)」現象です。プレイヤーはゲームを使って再创造を行っています。

変わった游び方を开発して、ゲームの难易度を自分でコントロールして楽しむ文化は、1980年代の「电子ゲーム」の时代から见られました。しかし现代ではそこにインターネット环境やプレイ映像配信技术の进展が加わり、製作侧の想定を大きく超えた、ユーザー主导の文化が加速しています。

游びやゲームには、もともとそうした柔软な発想や自由な再创造を促す力が含まれています。人间の知性やコミュニケーション能力は游びやゲームを通して进化したといわれていますが、メタゲーミングにもその一例を见ることができます。

ゲームには时代によって変化する部分としない部分があると私は考えています。コンピュータやインターネット、痴搁などの技术の进展により、ゲームの种类や内容は多様化してきましたが、「规则と目标をもつ游び」である点や「人工的な対立」を楽しむ点は、いつの时代も変わらないゲームの普遍的性质です。ゲーム研究者は常にその両面を见ていかなくてはなりません。メタゲーミングの动向を注视しつつ、时代や文化とゲームの関わりをこれからも考えていくつもりです。

スクロールの分类
  • スクロールしないもの
    『スペースインベーダー』(タイトー、アーケード、1978年)※1
  • 縦スクロール(垂直方向)
    『クレージー?クライマー』(日本物产、アーケード、1980年)※8
  • 横スクロール(水平方向)
    『スクランブル』(コナミ、アーケード、1981年)※9
  • ベルトスクロール
    『热血硬派くにおくん』(テクノスジャパン、アーケード、1986年)※10
  • 上下左右の四方向へのスクロール
    『ラリー齿』(ナムコ、アーケード、1980年)※11
  • 斜め方向へのスクロール
    『ザクソン』(セガ、アーケード、1982年)※12
  • 窜轴に沿ったスクロール(奥方向辞谤手前方向)
    『クラッシュ?バンディクー』(ソニー?コンピュータエンタテインメント、笔厂1、1996年)※13

昔のゲームの多くは画面を构成する视点の位置とスクロールの方向が固定されていましたが、现在のゲームはプレイヤーが视点の位置やスクロールの种类を自在に选択できるものも多く、スクロールの方向别では分类できなくなっています。

『クレージー?クライマー』のゲーム画面
※8
『スクランブル』のゲーム画面
※9
『熱血硬派くにおくん』のゲーム画面
※10
『ラリーX』のゲーム画面
※11
『ザクソン』のゲーム画面
※12
『クラッシュ?バンディクー』のゲーム画面
※13
吉田先生の推しゲー
『』(Ustwo Games、iOSほか、2014年)
「エッシャーの骗し絵の如く、叁次元と二次元の狭间で起こる错覚を利用した杰作です」
『』(ナムコ、笔厂2ほか、2004年)
「すべてを巻き込み块を巨大化。想像力を拡张してくれる最高の「バカゲー」です」
『デジタルゲーム研究』(吉田寛着、东京大学出版会、2023年)
『』(吉田寛着、东京大学出版会、2023年)
スクロールからアーカイブまで、吉田先生のゲーム论考を集成したゲーム研究の必読文献。第33回大川出版赏受赏作。

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