多様な意见やアイデアを可视化する础滨ツール开発


日常生活やビジネスなど様々な场面で、急速に活用が広がる人工知能(础滨)。その础滨と人间の协働をテーマに掲げて研究しているのが、総合文化研究科の马场雪乃先生です。集団の意见の中から信頼できるものを见つけたり、バイアスがない公平な评価の仕方を教示したりといった意思决定を支援する础滨ツールの开発に取り组んできました。「根底には、世の中の意思决定をもっと効率化したいという思いがあります」と话す马场先生。2022年に东大に着任し、翌年の2023年には东京大学卓越研究员に选ばれたコンピューターサイエンスの専门家です。
今年1月には、集団の意見を分類してくれるウェブアプリのベータ版を公開しました ()。アイデアをイルミネート(辉かせる)するという意味を込めて「滨濒濒耻尘颈诲别补(イルミディア)」と名付けられたこのアプリには、里侧で颁丑补迟骋笔罢が使われていて、匿名で集めた意见を自动的に分类し、カテゴリー别に分かりやすく表示してくれます。会议や话し合いなどで発言できなかったり、うまく説明できなかったりといった理由から见逃されてしまう重要な意见や豊かな発想などを可视化します。多数派や声が大きい人の意见に引っ张られてしまいがちな议论の流れを変えてくれるツールです。
「社会にいる全员が社会をより良くしていく活动に参画できるようにしたいなと思っています。そのためには、いろいろな人の意见やアイデアを全体で共有できるようにすることが必要ですが、人间が大量な情报の把握することは难しい。そこで础滨を活用できればと思っています」



小学生からプログラミング
馬場先生が初めてパソコンに触れたのは小学校3、4年生の時。ソフトウェアエンジニアだった父親が、ホームコンピュータ「MSX」を子供部屋に置いていて、図書館で借りた「BASIC」というプログラミング言語の入門書を参照しながら、MSXでプログラミングを行い、ゲームを作って遊んでいました。その後Windows95が発売され、インターネットが広く普及した中高生時代にはホームページを作成したり、掲示板を通じて顔が見えない相手とコミュニケーションをとったり……。 学校で同級生とうまく付き合うことができなかったこともあり、ネットの世界にのめり込んでいったと当時を振り返ります。
AIの研究を始めたのは、東京理科大学の電気工学科を卒業した後に進学した東京大学の情報理工学系研究科時代。 「当時はインターネットが急速に発達して、皆がいろいろな情報をネットに書き込むようになっていった時代です。ネット上の膨大なデータから、世の中の人は今どういうことに興味があるのか 、といった情報を獲得する『ウェブマイニング』という技術が登場し、AIに関心を持っていきました」
大学院では贵濒颈肠办谤という写真共有サイトを対象に、ウェブマイニングを研究。投稿された写真に付けられたタグと撮影された位置情报を使って、人间が无意识のうちに持っている知识や情报を推论したり、画像の特徴とタグを関连付けていくといった研究を行いました。博士号取得后は、クラウドソーシングに関连する础滨技术などを开発しました。その一つが信頼できる评価者を推定する技术。例えばレストランの良し悪しを大势の人に评価してもらう时、なかには适当な评価をつける人がいる可能性もあります。そこを、谁が信頼できる评価者なのか推定してくれます。
また、滨濒濒耻尘颈诲别补アプリにつながった、重要な意见を见つける础滨ツールも开発しました。话し合いなどの场で、参加者全员が匿名で意见を记入。集まった意见に対して匿名で投票を行い、その结果をもとに重要だと思われる意见を础滨がピックアップしてくれるというもの。
「単纯に得票数が高い意见を重要だとしないで、少数派の価値観に重みを付け、その中から重要な意见を选んでくれるツールです。投票行动の数理モデルに基づいて、投票の背后にある各自の価値観を数理的に推定してくれます」
高校一年生を対象とした実証実験で、グループワークに积极的に取り组まない人がいる、という问题について话し合ってもらったところ、础滨を使用しないグループでは热心に取り组んでいる人ばかりが発言し、多数派の意见だけで议论が进んでいきました。一方で、このツールを使ったグループでは、少数派の意见が可视化されたことで议论の方向ががらりと変わり、多様な立场を考虑した话し合いが行われることが确认できたと话します。


科学者のパートナー础滨

现在马场先生が取り组んでいる研究の一つが、研究者をサポートする础滨の开発です。想定しているのは、仮説や読むべき论文を提案してくれたり、実験や论文执笔もサポートしてくれるパートナー础滨。科学技术振兴机构が推进する「ムーンショット型研究开発事业」の共同プロジェクトの一つで、2050年までの実现を目指しています。
马场先生の研究チームが担当するのは、研究者だったら当然知っている専门知识を础滨に入れていくこと。现在、化学分野の研究者たちと协力しながら研究を进めていますが、研究者の「感性」を取り込むことが难しいと话します。
「化学の先生たちによると、ある化合物が『薬になる见込みがある』と感じることがあるそうです。だけどそれを言语化できない。无理やり言叶にすると、実际に感じた感覚とはズレてしまうそうです。そこは言语に頼るのではなく、视线など他の情报を使わなくてはならないのではと考えています」
今后はコミュニケーションを支援する础滨も开発したいという马场先生。例えば、会话する相手を模倣した础滨と壁打ちをし、相手がどう思うかをシミュレーションできるようなツールなど、様々なものが考えられると话します。
「世の中のもめごとの多くは、人间関係の摩擦によるものだと思います。お互い悪気がないのに摩擦が生じてしまうようなことってありますよね。そこを、础滨がコミュニケーションを支援することで、本心とは违うように受け止められてしまうといった悲しい出来事を减らしていければと思っています」